お寺で葬儀を行う際の問題点
現在、名古屋近辺では葬儀は葬儀会館で行うのが一般的です。以前は自宅で葬儀を行う方も少なくなく、お寺を利用される方も見られました。しかし、今日お寺で葬儀を行う方はごく少数です。
なぜお寺での葬儀は増えないのでしょうか。実はお寺で葬儀を行うには、お寺側が多くの課題をクリアする必要があります。
立地の問題
葬儀会館は、人目につきやすく利便性の高い、広い通りや大通りに面した場所に建てられることが多いです。
一方、お寺は古くから地域に根差しているため、周辺の道が狭かったり、道路が整備されていない場合があります。立地はすぐに改善できる問題ではありませんが、多くのお寺は葬儀会館と比較すると立地条件が良いとは言えません。
駐車スペースの問題
立地と同様に、駐車スペースの問題も大きいと言えます。多くの葬儀会館は、複数の葬儀が重なっても対応できるよう、広い駐車場を確保しています。さらに、近隣に第二、第三駐車場を用意している場合もあります。
現在、ほとんどの方が車で移動するため、お寺で葬儀を行うとなると、ある程度の駐車スペースの確保が不可欠です。小規模葬儀(10~20人)でも最低10台以上、中規模葬儀(30~50人程度)であれば30台以上の確保が望ましいでしょう。
車が溢れ、近隣住民への迷惑となる事態は避けなければなりません。
バリアフリーの問題
ほとんどの葬儀会館はバリアフリーに対応しており、車椅子の方でも入れるよう段差を少なくし、出入口を広く取り、エレベーターを設置していることが多いです。
しかし、バリアフリーに完全に対応したお寺はまだ少なく、車椅子の方が利用しやすいように整備されているお寺は少数です。
全ての方に安心して参列いただくためには、バリアフリーの問題は避けて通れません。
宿泊設備の問題
葬儀は急な場合も多いため、遠方のご遺族や親族が仮眠できる設備が必要となることがあります。
葬儀会館は基本的に24時間使用可能なため、急な宿泊にも対応できる葬儀社もあります。また、休憩室やシャワールームなどの設備が整っている葬儀会館も存在します。
お寺でも独自の葬儀会館を持っている場合は問題ありませんが、一般的な寺院施設では宿泊に対応できるところは限られます。
そのため、多くのお寺では「宿泊はできません」といった制限を設けざるを得ないのが現状です。
食事の問題
葬儀会館は、立地の良い場所に建てられていることが多いため、コンビニエンスストアや飲食店が近くにあります。ご遺族にとっても、徒歩圏内に食事の選択肢があることは大きな利点です。
一方、お寺で葬儀を行う場合、近くにコンビニエンスストアがなかったり、飲食店まで車で移動しなければならない場合もあります。
葬儀では一度だけでなく複数回の食事が想定されるため、近くに店がある立地の方が安心感があります。
万が一の火災やトラブルの問題
多くの葬儀会館は、防火設備や避難経路が整っており、建物も耐火構造が基準となっています。
お寺で防火設備や避難経路が十分に整っているところはまだ少なく、木造建築や古い建物が多いお寺では、万が一火災が起きた場合、甚大な被害につながる可能性があります。葬儀では火を使うため、万が一の事態に備えた対策が必要です。
その他、葬儀の準備で夜間に出入りする可能性も考慮すると、騒音に関する近隣住民とのトラブルも皆無とは言えません。
まとめ
私はお寺で葬儀を行うことを否定しているわけではありません。しかし、お寺で葬儀を行うには、利用される方々が便利に、そして安心して過ごせるよう、寺院側もきちんとした環境を提供する必要があります。
現状では、「お寺での葬儀がおすすめです」と安易に言うことはできず、上記の問題をクリアしていかなければ、皆様にご満足いただける葬儀を行うのは難しいと考えられます。せっかくお寺で葬儀をされた方が、「二度とお寺で葬儀はしたくない」と思われてしまっては本末転倒です。
「お寺で葬儀をやって良かった」と感じていただけるようにするためには、寺院側も十分な設備と備えが必要なのではないでしょうか。