寺院運営

僧侶がその道のプロの領域へ入らない方がいい理由

専門分野に深入りすべきでない理由

お寺は、皆様との関わりや繋がりといった「ご縁」を大切にしています。そのため、法要だけでなく、様々な催しやイベントを通じてご縁を育む活動をされているお寺も全国に多く存在します。

その催しやイベントに登場する、お坊さんバンド、お坊さんマジシャン、お坊さん漫才など、「お坊さん〇〇」として活動されている僧侶の方々もいらっしゃいます。もちろん、そうした僧侶の方々は、皆様とのご縁づくりや、少しでもお寺に興味を持っていただきたいという思いで活動されていることと思います。

しかし、「お坊さん〇〇」としての活動は、慎重になるべき点もあると考えています。その理由についてお伝えしたいと思います。

専門分野への踏み込みがもたらすこと

最も大きな理由は、その道で生計を立てているプロフェッショナルの領域に踏み込むことになる点です。例えば、マジシャンや漫才師といった職業は、その道を専門とするプロが存在します。そこに僧侶が足を踏み入れることで、本業であるプロの方々にとって、邪魔な存在となる可能性があります。

皆様にとって、僧侶がマジックや漫才を披露することは珍しいかもしれませんが、私たちの本業はあくまで僧侶です。マジックや漫才を皆様の前で披露するには、生半可な気持ちではできませんし、相応の練習時間も必要になります。プロの方々はそれを本業としているため、基本的にクオリティが高く、豊富なネタを持っています。

プロの世界は結果が求められるため、「面白くない」「良くなかった」という評価であれば、次回の依頼には繋がらないでしょう。生活がかかっているプロフェッショナルの領域に、本業が僧侶である「お坊さん〇〇」が入り込むことには、少々違和感を覚えます。

イベントを企画する主催者側も、依頼するのであれば、損得勘定を抜きにして、その道のプロに依頼するのが望ましいと考えます。

収益事業化のリスク

趣味やボランティアで披露する程度であれば問題ないかもしれませんが、謝礼などの収益を得ている場合、それは立派な事業となります。収益が発生する場合、マジックや漫才は宗教活動(宗教行為)とは見なされないため、収益事業として課税対象となります。

寺院は宗教法人法により、宗教活動のみが非課税対象となるため、それ以外の事業はすべて課税対象です。きちんと税務申告を行っていれば問題ありませんが、収益事業化というリスクを抱えることになります。

本業の疎かさ

新しいことに挑戦したり、誰もやっていないことに取り組む姿勢には賛成です。しかし、僧侶という立場をしっかりとわきまえる必要があります。もし、僧侶以外の活動が軌道に乗り、そちらが多忙になった場合、本業であるお寺はどうなるのでしょうか。「この日はイベントに参加するため、葬儀や法事はできません」となってしまっては本末転倒です。どうしても本業が疎かになってしまう懸念があります。

やはり、僧侶は僧侶にしかできない道(領域)を追求することが望ましいと考えます

まとめ

僧侶が宗教活動を越えて、安易に他の職業の領域に足を踏み入れるのは、慎重であるべきだと思います。例えば、葬儀社が自社の社員を僧侶に育成し(僧籍を取得させ)、葬儀社専属の僧侶にしてしまうと、私たち僧侶が困るのと同じ構図です。

安易に他の分野に足を踏み入れることは、様々な摩擦を生む可能性があります。

当寺では、寺院(僧侶)にしかできない「葬儀・法事・納骨」を法務活動の柱とし、日々皆様とのご縁づくりに励んでいます。

正蓮寺住職

当寺院の取り組みや住職の考えを発信してまいります。

関連記事

PAGE TOP