法要

法事にお餅は必要か!?

法事に餅は必要か

法事のご予定がある方から、「お餅は必要でしょうか?」というご質問をいただくことがあります。

かつてご親族がお餅をお供えしていたことを記憶されている方や、お内仏(お仏壇)の知識をお持ちの方からのお問い合わせが多いようです。

同時に、「どこで購入すれば良いのでしょうか?」「必ず用意しなければならないのでしょうか?」といったご質問もよく寄せられます。

お餅の入手が難しい現状

実情として、現在では法事用のお餅をすぐに購入できるお店は多くありません。

日頃からお付き合いのある和菓子店やお米屋さんであれば、予約をして手に入れることもできますが、少量では対応してもらえない場合もあります。

馴染みのお店がない場合、一般的なスーパーマーケットなどでお飾り用の丸餅が常に販売されていることは稀でしょう。お正月の時期には鏡餅や切り餅が店頭に並びますが、法事用の丸餅が常時置いてあることはほとんどありません。

もち米をご家庭で用意して作ることも不可能ではありませんが、大変な時間と手間がかかってしまいます。

こうしたことから、一般のご家庭で法事用のお餅を手軽に入手するのは、難しいのが現状です。

本来の法事におけるお供え

ここでは法事の由来などの詳細な説明は省略しますが、真宗大谷派の正式な法事の荘厳(しょうごん)としては、お餅をお供えするとされています。

お供えの中心となるのは白餅です。お正月には「鏡餅」、彼岸・お盆・年忌・中陰には「杉盛」のおかざりとなります。ご家庭のお内仏(お仏壇)は大きさもさまざまでしょうから、供笥(くげ)にふさわしい大きさの白餅をおそなえします。 「真宗大谷派お内仏のお荘厳」より

この文章は、真宗大谷派が一般の方向けに出しているパンフレットからの引用です。しかし、この説明では「現実的ではない」と感じ、皆様を困らせてしまうかもしれません。

おそらく、お餅のことよりも先に「杉盛とは何か?」「供笥とは何か?」という新たな疑問が生まれてしまうのではないでしょうか。

正式には、法事の際に白餅をお供えするのが習わしです。しかし、これはあくまで正式な作法であり、実際には白餅をご用意いただかなくても差し支えありません。

上用(薯蕷)饅頭による代用

もし、お餅をお供えしたいというお気持ちがおありでしたら、代用品として上用饅頭をおすすめしています。

上用饅頭であれば、和菓子店などで比較的容易に手に入ります。ただし、数多くお供えしたい場合は、事前に予約をされた方が確実でしょう。

「何個お供えすれば良いですか?」と尋ねられることもありますが、個数に決まりはありません。お供えの器に乗せられる数をお供えいただければ結構ですし、少量でもまったく問題ありません。

餅は決して必須ではありません

僧侶という立場でありながらこう申し上げるのは、適切ではないかもしれませんが、私はお餅を無理にご用意いただく必要はないと考えています。

もし皆様がお餅をすぐに購入できる環境におありでしたら、ぜひお供えをおすすめします。しかし、実際問題として、入手が難しいのが現状です。

そのため、当寺では「お餅がなくても大丈夫ですよ」とお伝えし、その代わりに季節の果物や故人のお好きだったお菓子などをお供えいただくようご案内しております。

この点については、お寺や僧侶によって考え方が異なるかもしれませんが、当寺では皆様に無理のない範囲で法要を営んでいただくことが大切だと考えております。

まとめ

今でも、「法事には何をお供えしたら良いですか?」というご質問を非常に多くいただきます。

このように、何を用意すれば良いかをお尋ねいただけるうちはまだ良いのですが、「法事の準備は面倒だ」「なぜお餅が必要なのか」といった疑問が、皆様の法事離れや寺院離れに繋がってしまうのではないかと危惧しております。

私たち寺院側も、現代の生活にそぐわない内容や、現実的ではない慣習については、時代や状況に合わせて柔軟に対応していく必要があるのではないでしょうか。

いつまでも「昔は皆こうしてきた」「正式にはこうだ」と繰り返していては、特に若い世代の方々の関心は薄れ、ますます仏事から心が離れていってしまうでしょう。

法事において最も大切にしていただきたいのは、形式や慣習そのものよりも、亡き人を偲ぶ皆様の温かい「おこころ」、すなわち「お気持ち」であると、私は考えています。

正蓮寺住職

当寺院の取り組みや住職の考えを発信してまいります。

関連記事

PAGE TOP