眠くなる読経
皆様は、僧侶の読経に対してどのような印象をお持ちでしょうか。
意識されることは少ないかもしれませんが、「声が大きい」「迫力がある」「音程が気になる」など、僧侶によって様々な印象を持たれるかと思います。
では、どのような読経が良いとされているのでしょうか。
心地よい読経のすすめ
結論から申し上げますと、心地よくて眠くなるような読経が良いとされています。
ここで言う「眠くなる」とは、退屈さや飽きからくるものではなく、安らぎや癒しを感じるという意味合いです。
皆様も、お好きな歌手の音楽を聴いて「心地良いなぁ」と聴き入った経験がおありかと思います。それと同じように、読経にも心地良い音色、テンポ、音程といった要素があるのです。
子守歌のような心地良さが理想
さらに具体的に言うと、まるで赤ちゃんが安心して眠ってしまうような、子守歌のような優しさや滑らかさを持った読経が良いとされています。
私自身、0歳から2歳くらいの赤ちゃんがいらっしゃるご家庭での法事の際には、特にこの点を意識して読経いたします。
読経の声が大きすぎたり、騒がしかったりすると赤ちゃんを起こしてしまう可能性があるため、子守歌を歌うように、眠りを妨げない読経を心がけています。
ここで誤解のないように補足しますが、子守歌のような読経とは、囁くように小さく、聞き取れないような読経ではありません。はっきりと聞こえるけれど、「テンポが心地よくて、柔らかく、スムーズだなぁ」と感じられる読経のことです。
別の表現をするならば、小鳥のさえずりのように心地良い読経とも言えるでしょう。
聴きづらい読経とは
一方で、聴きづらいと感じてしまう読経もあります。具体的には、
・うるさい（声が大きすぎる）
・せわしい（落ち着きがない、早口）
・声がこもっている（喉から声を出している・お腹から声が出ていない）
・音程が不安定（音が外れている）
読経は、ある意味では音楽と同じです。聴いていただく方のために行うものですから、やはり心地良さは非常に大切な要素です。
僧侶の中にも誤解されている方がいらっしゃいますが、「大きな声で力強い読経が良い」と考えている方が少なくありません。しかし、声が大きくて力強くても、それが心地良ければ良いのですが、張り上げすぎて「うるさい」「耳障りだ」と感じさせてしまうのは好ましくありません。
この点は非常に繊細で、聴く人によって感じ方や受け取り方が異なるため、読経（声明）の奥深さ、難しさでもあります。
まとめ
僧侶は読経のプロフェッショナルです。葬儀、法事、納骨など、様々な場面で読経をいたします。
日頃から皆様に耳を傾けていただくものですから、当寺では常に読経の訓練や鍛錬を重ね、心地よさの向上を目指しています。
皆様が心地よくて、思わずうっとりしてしまうような読経をすることが、最終的な理想です。
僧侶にとって、読経一つをとっても、日々の研鑽は欠かせないものだと考えております。
